ミルフィーユ味噌カツ

入江亮子氏のおうち酒簡単レシピ
第49回 「ミルフィーユ味噌カツ」

常きげん 純米吟醸 風神


いよいよ夏本番ですね。毎日真夏日が続きますが、体がまだ暑さについていけてなくて、かなりだるい方、多いのではないでしょうか。つい冷たいビールに手が伸びてしまいますが、夏場こそ、お燗で体を温めて発汗を促したいもの。今回はきりっとしたシャープなキレが特徴の石川県・鹿野酒造「常きげん 純米吟醸 風神」をご紹介します。常きげんといえば、ずっと根強いファンをもっているブランドですが、やはりその味わいの安定性やどんな温度でも美味しいあたりなのでしょう。この純米吟醸は推奨温度が常温、冷酒あたりですが、お燗にするとぐーっと隠れていたうま味がでてきて楽しいです。やや高めな45~50度くらいがキリっとさがまして、このお酒には合いました。

さて、合わせる料理は熟成粕入りの「ミルフィーユ味噌カツ」にしました。八丁味噌と熟成粕の濃厚な風味と豚の脂、大葉のさっぱりさがあいまってたまりません。不足しがちなビタミンB群も豚肉にはたっぷりです。熟成粕(練り粕)は、意外と知られていないのですが、漬け物などに使用するために蔵で数ヶ月寝かせた粕で、メイラード反応によってうっすら茶色くなり、柔らかで扱いやすいです。ちょうど今頃から売り出されるのですが、手に入らなければ、味噌と大葉だけでも十分美味しいですよ。


<材料>2人分
豚ロース薄切り 200g
大葉 10枚
熟成酒粕吟醸留粕 50g
八丁味噌 大さじ1
卵 1個
小麦粉 適宜
パン粉 適宜
揚げ油 適宜
 
<作り方>
1.豚ロースに大葉、粕、味噌を交互には重ねていく。
2.1に小麦粉→溶いた卵→パン粉とまぶして170度の油でゆっくり焼き揚げにする。
3.食べやすい大きさに切って、好みでスダチなどしぼって食す。

<ワンポイントアドバイス>
1.油は1cmくらいで大丈夫。揚げ焼きの要領です。
2.片面3分は動かさないこと。何度も返していると衣が取れてしまいます。
3.衣をつけるときに、ぎゅっと力を込めてしまうと、挟んだ味噌や粕がでてきてしまうのでそっと優しくまぶしてくださいね。

がっこポテサラ

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第48回 「がっこポテサラ」

天の戸 生もと純米


入梅の報に気を曇らせる今日この頃ではありますが、雨後の新緑はひときわみずみずしく、鬱陶しい季節にも良いことはありますね。また梅雨の晴れ間がやけにありがたく、人間なんでも気の持ちようだなぁとしみじみいたします。さて、蒸し暑さでけだるい毎日ではありますが、お燗でしっかと体調を整えて、訪れる猛暑に備えたいもの。今回ご紹介するのは、秋田は横手の浅舞酒造「天の戸 生もと純米」です。天の戸といえば、生産地にこだわり2011年からは蔵から五キロ圏内の米で純米酒だけを仕込んでいます。この生もとは白麹仕込みで、全体をほどよく優しい酸が引き締めており、純米らしい味わいに奥行きも感じられ、延々と呑んでしまいそうなお酒です。お猪口に注いでは、手のひらで温める”手のひら燗”でより優しさと膨らみを感じていただけましたらと思います。

秋田と言えばいぶりがっこ。最近はそのものを食べるだけでなく、チーズと合わせたり様々な料理の隠し味に使われたりと大活躍の食材ですよね。今回は日本のマンマの味の代表格ポテトサラダにクリームチーズと加えて、お酒のアテにしました。いぶりがっこのスモーキーな香りとクリームチーズの酸味がお酒と口の中で融合する瞬間を楽しんでくださいね。


<材料>2人分
ジャガイモ(大きめ) 1個
いぶりがっこ 50g程度
クリームチーズ 100g
塩コショウ 適宜
たまねぎ 10g(1/8くらい)
マヨネーズ 大さじ1
 
<作り方>
1.ジャガイモは塩少々を入れた水に入れ、ふっとうしてから15分程度、柔らかくなるまでゆでる。急いでいるときは、皮を先にむいて、ラップをして電子レンジにかけてもけっこうです。

2.タマネギはみじん切りにして、水に5分程度さらし、軽く絞っておく。
3.いぶりがっこは粗みじんに刻んでおく。
4.ボールにゆであがって皮をむいたジャガイモを入れ、2と3を加えて、クリームチーズ、マヨネーズ、塩コショウで調味する。

<ワンポイントアドバイス>
1.いぶりがっこが好きな方は、ジャガイモの半量まで入れて大丈夫です。その場合は塩は必要ないかと思います。必ず味見をして足りないようなら塩は加えてください。
2.残ったら、俵型に成形してパン粉をつけて両面焼いても、コロッケみたいで美味しいですよ。コンソメスープで煮れば具だくさんのスープにもなります。
3.タマネギの代わりに万能ネギなどを使えばより和風になりますし、彩りもきれいですね。

ポークリエット

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第47回 「ポークリエット」

大七 生もと純米 楽天命


若葉がまぶしい季節になりました。夏も近づく八十八夜も過ぎて、いよいよ本格的な田植えのシーズンにもなって参りますね。今年のお米も無事に育っておいしいお酒になるよう祈るばかりです。

さて、今月は大七酒造さんの純米酒の最高峰「楽天命」をご紹介したいと思います。2007年醸造で木桶仕込みの生もとです。生もとならではの奥行きのある味わいとキレ、そしてかすかに木桶の香りもあり、熟成のもたらすまとまり感が抜群です。現在では若手醸造家を中心に木桶仕込みをされるお蔵も増えてきました。一筋縄ではいかない木桶の天然素材の魅力が、醸造家たちの心を動かしているのではないかなと思います。ぬる燗でどうぞ。

すきっとした酸の切れ味あるお酒には、やはり脂の料理が合います。ポークリエットというと豚の塊をかってきて、さらにラードでコトコト煮て・・・とかなり家庭で作るのはハードルが高いかと思うのですが、今回は普通に売っている豚バラ肉と日本酒で簡単に作ります。さらに酒粕を入れてクリーミーに仕上げました。特に大七酒造さんのとろける酒粕はパッケージも使いやすく、柔らかいので伸ばす必要もなくすぐに使えて便利ですし、やはり同じ蔵の素材を使うとマリアージュしやすいですよね。ちょっと時間はかかりますが簡単ですし、作り置きできますので、ぜひ晩酌の定番料理にしてください。


<材料>2人分
豚バラ肉 300g
塩 小さじ1/2
コショウ 少々
ニンニク 1かけ
酒 300cc
たまねぎ 1/2個(70g程度)
ベーコン 30g
ローリエ 1枚
とろける酒粕 50g
ピンクペッパー 適宜
 
<作り方>
1.豚バラ肉は適当に切って、塩コショウする。

2.ベーコンも適当に切っておく。
3.タマネギは荒みじんに切っておく。
4.ニンニクは皮をむいておく。
5.鍋に豚バラ肉を入れ、火をつけてゆっくりと加熱して、全体が白っぽくなったら2~4を加えて、ローリエも入れる。
6.さらに数分炒めてタマネギに透明感がでたら酒を加え、強火にして浮いてきたアクをとったら、弱火にして水分がほぼなくなるまでコトコトと煮ていく。
7.鍋を冷水で急冷したところに酒粕を加え、フードプロセッサーにかけてなめらかにする。
8.器に盛って、クラッカーなどに塗って食べる。好みでピンクペッパーなどを添える。

<ワンポイントアドバイス>
1.ベーコンを加える事によって、味に深みとかすかなスモーク香がついて、肉の臭みが気になりません。
2.できればすぐに食べずに器に入れて空気に触れないようにラップを密着させて1時間くらい冷蔵庫で寝かせてから召し上がると、味も落ち着きよりおいしく食べられます。
3.とろける酒粕でない場合はお酒で少し柔らかくしてから加えてください。

浦里

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第46回 「浦里」

酔鯨 純米吟醸 吟麗


先日までオーバーがクリーニングに出せないような寒い日もありましたが、すっかりうららなか季節となりました。皆様も親しいご友人やご家族、ご同僚とお花見を楽しまれたかと思います。春風の心地よさにつられ、山菜や竹の子も市場に所狭しと並んでいます。 一方で、転勤やお引っ越し、ご入学などでなにかとあわただしく、ストレスの多い落ちつかない、もわっとした時期でもありますね。そんな時には、すっきりとしたお酒が一番!ということで、今月は高知の銘酒「酔鯨 純米吟醸 吟麗」をご紹介します。精米歩合50%で、優しい米の味わいとキレのバランスが良く、香りも穏やかで、食中酒としてうってつけです。スタートは冷やしてシャープさを楽しみ、飲むほどにほかほかとして来たら、手のひらで温めて人肌燗はいかがでしょう(画像は比較的熱に強いガラスお猪口です)。

あてには江戸時代の遊郭のモーニングをご紹介したいと思います。花魁の名前にちなんだ「浦里」です。池波正太郎さんの小説や落語でご存じの方もおいでかと思います。大根と梅干しとおかか、海苔とくれば、もう材料だけ聞いてもまずいわけがない!という確信がもてますよね。さらに胡麻と大葉を足してみました。この浦里を温かいご飯に乗せて食べるのが吉原のモーニングなのですが、浦里はそれだけでもとってもいいお酒のアテにもなるんです。しかも5分もかからず包丁がなくてもできます。大根のジアスターゼが消化も助けてくれるし、カロリーも低くとってもヘルシー!ぜひお試しください。


<材料>2人分
大根 100g
梅干し 1個
大葉 5枚
いりごま 小さじ1
おかか 適宜
もみ海苔 少々
塩 小さじ1
醤油 少々
 
<作り方>
1.大根は鬼おろしでおろして、塩を振って10分程度置き脱水させ、ザルにあけて、余分な水分を捨てる。
2.梅干しは種をとりのぞき、軽く包丁でたたいておく。
3.大葉はざく切りにするかちぎって、水に放っておく。
4.ボールに1、2と水気を切った3を入れ、さらに鰹節、煎りごまを加えてよく混ぜて味見をし、もし薄いようだったら醤油をたらして味調整をする。
5.器に盛って、もみ海苔を天に乗せる。

<ワンポイントアドバイス>
1.大根は葉に近いほうが甘いので、生で食べるこの料理には向いています。もしおろした時に辛かったらボールに水をためてその中でザルにいれた大根おろしをすすいでください。流水で洗うと辛味が抜けすぎてしまうので、必ずボールでやってくださいね。
2.鬼おろしがなければ、大根を食べやすい大きさに切ってポリ袋に入れて上からすりこぎなどで叩いてください。普通の大根おろしは使わないほうが食感が楽しめます。

山菜の天ぷら

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第45回 「山菜の天ぷら」

一生住吉 あらばしり


寒さのためさらに衣を重ねて着るので「衣更着(きさらぎ)」という当て字もあるほど、今月は雪がちらつく寒い日があったり、ポカポカ陽気の日もあったりで、まさに三寒四温の毎日ですね。風邪も流行っていますので、ぜひお燗酒で体をいたわってあげたいもの。今月も新酒をご紹介します。お馴染みの樽平酒造の「一生住吉 あらばしり」です。こちらは1回火入れの生貯蔵酒で、生酒に比べ落ち着きがあり、アルコール度数も15度と飲みやすい度数で、するするっとのどを心地よく通る良いキレがあります。さすが長らく日本酒ファンのハートを射止めてきたお蔵のお酒だなと思わせるバランスの良さです。山形県産米100%使用で、純米酒ですが、お値段もお手頃。あらばしりらしさを生かしたぬる燗あたりがおすすめです。

たらの芽、蕗の薹、行者にんにく、うるいなど山菜がそろい始めました。山菜のほろ苦さは、免疫力アップにもなり、辛い花粉症にも効果があると最近はいわれていますね。
山菜といえばやはり天ぷらが一番おいしく食べられる調理方法かと思います。揚げ物は苦手という方も多いのですが、こういった水分の多い食材を上手に揚げるには、打ち粉を打つことによってカリッと揚がります。揚げ物こそ、ご自宅で揚げたてを召し上がっていただきたいなと思います。


<材料>2人分
ふきのとう 2~4個
行者にんにく 2本
たらの芽 2個
片栗粉 適宜
薄力粉 50g
冷水 1/2カップ
サラダ油 適宜
塩 適宜
 
<作り方>
1.山菜はそれぞれ洗って、キッチンペーパーなどでしっかり水分をとり、蕗の薹は開き、たらの芽ははかまをとって、根元の太いところに十文字に包丁を入れる。
2.1に薄く片栗粉をまぶす(打ち粉)。この一手間で衣が脱げてしまうことがなくなり、かつサクッと揚がります。
3.冷水に薄力粉を入れてさくっと混ぜて衣を作り、2をくぐらせて160~170度で揚げ、好みで塩を振って食べる。

<ワンポイントアドバイス>
1.材料に打ち粉をしたら、水分でべちゃべちゃにならないように、なるべく早く揚げましょう。
2.今回は卵を使っていませんが、卵を入れる場合は1/2個くらいです。よく水と混ぜたところに粉を入れます。くれぐれもかき混ぜすぎないように。
3.揚げる順番はアクの少ないたらの芽、ふきのとう、行者にんにくの順で揚げましょう。
4.塩以外に、マヨネーズや練り味噌をつけて食べても美味しいです。残ったら食べやすい大きさに切って、ハムなどと一緒にスパゲティの具にしたり、チーズで焼いても美味しいです。二次利用も天つゆなどを使用しないほうが向いています。

里芋サラダ

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第44回 「里芋サラダ」

聖 特別純米 若水60 しぼりたて


新酒が出そろいましたね。新酒の魅力はなんといってもフレッシュさ。なので、生酒で出荷してくるお蔵が多いかと思います。今回はそんなフレッシュな生酒「聖 特別純米 若水60 しぼりたて」をご紹介します。

無濾過でアルコール度数も16~17度あり、かなりパンチの効いた新酒ならではのアタックがあります。原料米も群馬県の酒造好適米若水を100%使用で、味わいもしっかりです。お燗にすると、ふわっとアルコールがたちのぼり、辛口好きの方にはこたえられないでしょう。ぬる目がおすすめです。

居酒屋の定番メニューといえば、ポテサラですが、ジャガイモだけでなく、サトイモで作っても美味しんです。とくに今回のようなピチピチした新酒のお燗には、ねっとりとしたサトイモのおかげでマイルドにおなかへと入っていき、体に優しく飲めます。
里芋をゆでている間にネギやベーコンを切って、後はつぶしてドレッシングと混ぜるだけ。残ったらチーズを乗せて焼いてもいいし、コロッケにしても美味しいし、出汁で割ればポタージュスープにもなるし、かなりいろいろと楽しめますのでたっぷり作ってください。


<材料>2人分
里芋(中) 2~3個
ベーコン 30g
万能ねぎ 2本
オリーブオイル 大さじ1
酢 小さじ1
塩・こしょう 少々
 
<作り方>
1.里芋はよく洗って、皮のまま水から10分程度ゆで、柔らかくなったら笊にあけ、皮をむいて熱いうちによくつぶす。
2.ベーコンは1cm程度に食べやすい大きさに切り、万能ネギは小口に切っておく。
3.1にオリーブオイル、酢、塩・胡椒を加えよく混ぜ合わせてから、ベーコンと万能ネギを加え、さらによく混ぜ合わせて器に盛る。

<ワンポイントアドバイス>
1.調味料は市販のドレッシングでもOK。大体大さじ1杯程度で足ります。
2.ベーコンの代わりにハムや鮭のフレーク、じゃこなどでも美味しいです。

鯛の塩昆布〆

入江亮子氏のおうち酒簡単レシピ
第43回 「鯛の塩昆布〆」

特別純米 若鶴雄山錦


新年おめでとうございます。七草も召し上がってそろそろ御屠蘇気分から本調子が戻り始めたころでしょうか。

年末年始はお酒とのご縁が一段と深くなる時期ですが、今回ご紹介する「特別純米 若鶴雄山錦」は温度帯、料理を選ばず万能に寄り添ってくれるとても優秀なお酒のひとつです。2013年スローフードジャパンでは極上燗酒部門で金賞も受賞しています。
雄山錦はなじみの少ない酒米かもしれません。立山連峰の主峰”雄山”とその山々が錦に染まる時期に収穫されることから名づけられたという富山県のオリジナル酒造好適米で、倒伏に強く、心白も大きく、もろみに溶け易い特徴を持っています。ちょうど若鶴の蔵近くが雄山錦の主産地、砺波平野です。45度でふわっとアルコール感あるパンチのきいた味わいがきますが、1,2分後二口目を飲めば、柔らかな口当たりで米本来の優しい味わいが全面にでてきます。

年末は御節、年明けは初釜の出張料理と、私にとって年末年始は1年で最も忙しい時期ですが、仕事が終わってほっと一息、自宅での晩酌はとにかく簡単にちゃっちゃっとアテを作りたい、そんなときに大活躍なのが塩昆布です。旨味成分グルタミン酸が豊富なので、それだけでもちびちびといけるのですが、ちょっと白身魚のお刺身が残った時などに乗せたりかけたりしていただくと、魚の持っているイノシン酸とあいまって旨味が倍増してくれます。ほんの1分もかからずできてしまう、最高のアテです。塩昆布の塩分がありますので、醤油も必要ありません。


<材料>2人分
鯛刺身(柵でも) 70g
塩昆布 適宜
山葵 適宜
 
<作り方>
1.鯛は柵ならそぎ身にする。
2.塩昆布を数本1に巻く。
3.皿に盛り付け、山葵とともに食す。

<ワンポイントアドバイス>
1.塩昆布で巻いたら、数分置いてから食べたほうが昆布がやわらかくなって食べやすい。
2.鯛以外にも白身魚なら何でも向きます。

ローストビーフ

入江亮子氏のおうち酒簡単レシピ
第42回 「ローストビーフ」

黒松仙醸 燗熟純米


年の瀬も押し迫ってきましたね。車も人も急ぎ足でまさに”師走”です。例年になく温かい日が多いですが、朝夕はぐっと冷えこんで、寒暖の差で体調を崩されている方も多いかと思います。体に優しいお燗酒でぜひ自身のお体労ってあげてください。今回ご紹介するのは来年創業150周年となる長野県伊那市高遠町の「黒松仙醸 燗熟純米」。まさにお燗酒のためのお酒といっていいネーミングですね。使用米は信州の酒造好適米ひとごこちを麴米にも掛け米にも使って、吟醸スペックの60%まで研いている特別純米です。常温ですと甘やかな感じですが、 ひとたび燗に致しますと、ぐーんとボリュームとキレが出てまいります。人は寒くなりますと、体温を維持するためにカロリーの多い味の濃いものを欲しますので、

まさに今のシーズンにうってつけの味わいあるお酒です。45度くらいの上燗でどうぞ。

クリスマスシーズンでもありますので、料理は「ローストビーフ」にしてみました。肉の塊の表面を焼いたら、密閉できる袋に入れ、あとはお湯にどぼんと漬けておくだけでちょうど良い火の通りになります。コツはまず肉を常温に戻しておくこと。そしてお湯は沸騰させない
小煮立ちの状態に入れることです。うっすらと温かい肉からしみでる肉汁と黒松仙醸の濃醇な味わいが溶け合いますよ。お肉に火が通るまでに作れるソースも2種ご紹介しますね。ほかにも塩と山葵、ポン酢、色々お試しください。余ったお肉は刻んでガーリックライスに入れたり、サンドイッチの具にしても美味しいです。


<材料>2人分
牛もも肉 500g
塩 小さじ1/3
胡椒 少々
サラダ油 適宜
クレソン 1袋
ホースラディッシュ 適宜
 
<作り方>
1.肉はにしっかりめに塩胡椒し、30分程度常温におく。
2.フライパンにオイルを敷き、表面を転がしながら強火で焼き色を着ける。
3.ジップロックなど密閉できるポリ袋に2を入れて80度の湯に入れて浮き上がってこないように重い落し蓋をし、20分程度冷めるまで置く。
3.ローストビーフをスライスし、すりおろしたホースラディッシュ、脇にクレソンを置き、好みのソースでどうぞ。

<ワンポイントアドバイス>
1.ローストビーフがお湯に浸かっている間にできるソースを2種紹介します。

味噌ソース:八丁味噌大さじ2、仙台味噌大さじ1、みりん大さじ2、酒大さじ1、砂糖大さじ1、胡麻油小2、ラー油少々
醤油ソース:醤油・米酢各小1、サラダ油大2、ごま油小1、粒マスタード・胡椒少々

※味噌ソースは鍋に味噌、みりん、酒、砂糖を入れてよく混ぜてから火に掛け、砂糖が溶けてツヤが出てきたら火を止めてごま油とラー油を加えます。醤油ソースはただあわせるだけです。

鯵の飴煮

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第41回 「鯵の飴煮」

木曽川 熟成生詰


銀杏や紅葉が日に日に色づいてすっかり秋も深まって参りました。立冬も迎え、暦の上ではいよいよ冬!お燗が沁みる季節到来ですね。

さて、今回ご紹介するのは、お燗ラバーたちがこよなく愛する1本「木曽川」です。火入れを1度かけてから3年以上熟成させて出荷前には火入れを行わない”生詰”のお酒です。度数は17~18度と強めなので、熟成によるまろやかさやカラメルの馥郁とした香りとともにアルコールのパンチ力もあり、なんと1升で1000円台と懐にも優しいのです。がっと60度越え位でふわっと立ち上るアルコール感と熟成による口当たりの良さに酔いしれ、徐々に冷めていく過程を楽しんでいただければ幸いです。

熟成感のあるお酒には料理にも似た味や香りがあるとあわせやすいですね。今回の木曽川は熟成酒ではあるのですが、軽快な飲み口ですので、砂糖と醤油などでは重過ぎてしまうので、旬の鯵を使ってみりんと醤油で上品な味わいの飴煮にしました。
一見、すごく手間がかかりそうで、かなりプロっぽい料理ですが、しっかり分量を守っていただければどなたでも上手に作れます。
同じく季節の茸類や銀杏などを添えていただければボリュームもでて、かつヘルシーです。みりんは必ず本みりんを使ってくださいね。


<材料>2人分
鯵 小ぶりなもの2尾
塩 少々
小麦粉 適宜
揚げ油 適宜
みりん 大さじ5
醤油 大さじ1
銀杏 適宜
 
<作り方>
1.鯵は3枚におろし、腹骨、中骨を取り除き、皮をむいて3~4等分にそぎ身にし軽く塩を振っておく。
2.銀杏は殻を割っておく。
3.1に軽く小麦粉を振り、銀杏は薄皮がついたまま170度くらいの油で揚げ、銀杏にだけ塩を振っておく。
4.小鍋にみりんと醤油を入れ、沸騰後3分程度煮詰め、そこに揚げた鯵を入れ、さっと絡める。
5.器に鯵と銀杏を鋳込むように盛り付けて召し上がってください。

<ワンポイントアドバイス>
1.毎度揚げもののときに書いていますが、油は5mmくらい鍋にあれば十分揚がります。そのかわり新鮮なものを使い、使用後は捨ててください。
2.この料理に合う添えの野菜は銀杏のほかに椎茸、舞茸など。素揚げして薄塩を振ってください。飴たれに絡ませるのは鯵だけのほうが味に変化が出ていいですよ。
3.鯵のほかに鯖や鰯、秋刀魚などでもできます。飴だれは揚げたものと絡ませることにより乳化されてよりよろみがでます。
4.好みで七味か粉山椒を振っても美味しいです。

 

牛肉の柳川風

入江亮子氏のおうち酒簡単レシピ
第40回 「牛肉の柳川風」

牛肉の柳川風と「いなば鶴 特別純米 ろくまる強力」


いよいよ秋本番。1年のうちで最も過ごしやすい季節、澄み切った秋晴れの空はまさに清秋ですね。きのこや栗、柿、サンマ、いくら、鮭、戻りカツオなど、食材も一気に秋一色ですね。気温が25度以上になるとアイスクリームが売れ始めるというのはよく知られていることですが、秋冬料理の代名詞でもあるおでんは、18度以下になると良く売れるようになるそうです。お酒も空気が乾燥して過ごしやすくなってくると、少し旨味が乗ったものをじっくりとお燗で飲みたくなってきますよね。
さて今回ご紹介するのは、そんな秋の嗜好にぴったりの中川酒造「いなば鶴 特別純米 ろくまる強力」です。商品名の”ろくまる”とは精米歩合60%の意味です。強力とは酒米の名前で、大正時代に鳥取で在来種から選抜され、県の推奨品種としてよく使われていたのですが、長かんのため、育成に手間がかかることなどから、戦後途絶えていたのでした。それが平成に入り見事復活、特に中川酒造さんでは「強力(米と酒)をつくる会」を発足し、米つくりから一般の方に参加してもらって、より鳥取の酒文化を理解してもらう活動もを行っています。この強力、関係者にお話を伺うと、まさにお燗にぴったりの品種だそうです。確かに42~45度くらいでじわじわ味わいにボリュームがでてきます。かなり常温とはイメージが違ってきますので、その瞬間をどうぞ見つけて楽しんでくださいね。

柳川といえばドジョウが思い浮かびますが、牛肉も美味しいですよ。ゴボウの土の香りと相性が抜群です。卵でとじるとマイルドになりますし、冷めにくいというメリットもあるんです。


<材料>2人分
牛肉 100g
ごぼう 70g
卵 2個
万能ねぎ 1本
出汁 1cup
みりん 大さじ1
醤油 大さじ1
砂糖 大さじ1

<作り方>
1.
牛肉は食べやすい大きさに切っておく。
2.ゴボウは笹がいて水に放っておく。
3.ねぎは小口に切っておく。
4.鍋に出汁を入れ調味し、1を入れ、数分煮てから2を加える。
5.牛肉の色が変わって来たら、割りほぐした卵を入れ、1分程度で火を止め、ネギをかける。

<ワンポイントアドバイス>
1.冷凍してあるお肉などでも美味しく作れます。お肉がない時はナスの薄切りで作ってもなかなかいけますよ。
2.卵を入れるタイミングは具をある程度食べてからでも大丈夫です。
3.薬味はネギや三つ葉などがなければ、七味とうがらしや山椒の粉でも代用できます。